猫と人。繋がるものがたり ネコット

まんが家(イラストレーター) 2023.07.07 小さな〝ユウタロウ〟の奇跡  

ひだまりの猫 1話

私の家は日光市の山の中にあります。嫁さんと二人で作った薔薇の庭やテラスに人を招きながら、10匹の猫と暮らしています。

猫との出会いや思い出をそれぞれ書き記しておきたくて…。
「ひだまりの猫」の話、ぼちぼち聞いてください。
1話は、頑張った小さな〝ユウタロウ〟です。

当時、我が家では3匹の猫(全て雑種です)を飼っていました。
ある日、ひとり息子がどうしてもメスの子猫が欲しいと言い出しました。
たまたま知人が「生まれたばかりの猫がいる。見においでよ」と言われたので、早速友人Kのところに子猫を見に行くことにしました。
ケージには、スコティッシュの子猫がいました。そして、もう一匹隣にいたのが、
今回お話しするオスの子猫の〝ユウタロウ〟でした。
最初はメスの子猫をだけのつもりだったのに…
一緒にいたこのオスの子猫が、あまりにも可愛いいのです。
「えーい この際 清水の舞台だ~」と。

無謀にも2匹一緒に連れて帰ることにしました。 そんな訳で、我が家では今まで飼っている3匹の猫たち(雑種ですよ)の中に、いきなり血統書付きの子猫が2匹、加わることになり全部で5匹になりました。

我が家に来たばかりの〝ユウタロウ〟と〝リーネ〟
病気になる前の〝ユウタロウ〟

猫の紹介をすると まず古くからいる家猫の〝レイ〟。この猫が我が家のボスです。

そしてこの〝レイ〟に追い出され 外で飼われる事になった〝イッコ〟〝ニコ〟。

後ろにいるのが、当時は野良だったけど後に我が家の一員になる〝”チャー

そして今回新たに加わった新人の2匹の子猫が〝リーネ〟〝ユウタロウ〟

さて前置きが長くなりましたが、このまま5匹平穏無事に仲良く暮らしてくれれば何の問題もなかったのです。
〝リーネ〟〝ユウタロウ〟の2匹も1ヶ月も経たないうちにトイレも所定の場所でするようになり、何の問題もなく順調に育っていました。

ところがです!
この2匹を飼い始めて3ヶ月たった頃、ある異変に気が付きました。
ユウタロウが、後ろ足を引きずるようになったのです。
それもかなり重症です。
「エー なんで… この子が…」  
慌ててネットで検索すると、これはスコティッシュ特有の病気らしく、なんと骨が溶けてしまう奇病らしいのです。
1年以内に発病するコトが多いこと、特にオスがその病気にかかりやすいことを知りました。(あくまで ネット上の情報です。)
その1年以内、そう3ヶ月でユウタロウは発病したのです。
ユウタロウの下半身はそれからしばらくすると、完全に機能停止しました。  
上半身はまともで普通の猫なのに、後ろ足がまったく動かなくなったのです。
ネットで調べると、この時はかなり痛いらしく、痛みを訴えて鳴く声に飼い主がいたたまれなくて辛いと言う記事も掲載されていました。
そして発症すると死亡率も高いとの事
幸いユウタロウは、痛いと鳴くことはなかったのですが、行きつけの病院でレントゲン写真を見せてもらったところ、確かに脊髄の一部が白く溶けているらしく、こうなっては手の打ちようもないと。
獣医の先生からは「もって半年ですね」と言われました
友人Kさんも責任を感じて「この子はうちに戻して、面倒見るわ」と言ってくれたのですが、欲しくて連れてきた猫です。
いったん家族になったからには、そんなわけにはいきません。
ユウタロウ以外の猫は考えられません。

とにかく「自分たちでやれることは何でもやってみよう」と言うことになりました。
Kさんと私の嫁さんがタッグを組んでのユウタロウ再生プログラムが始まりました。
まず、下半身不随のユウタロウのトイレ問題です。
この時はもう自力で排尿することも出来なかったユウタロウの下腹部を、Kさんが自分で押して排尿させてくれました。
床ずれしないように右に向けたり左に向けたりしながら、毎日これを繰り返しました。
Kさんにも仕事があります。これは仕事の合間にやるしかありません。食事だって流動食です。これだけでも、ひと苦労です。

しかし、その甲斐はありました。
1ヶ月もするとユウタロウが、何とか自分の力だけで、排尿ができるようになったのです。
前足を使って、ひとりでトイレに行けるようになりました。
私たちが見た最初の奇跡です。
Kさんには本当に感謝しかありません。
ただ、前足だけを使って這って歩くため、この頃のユウタロウの前足の肘から先は
すりへって、みごとに毛がなくなっていましたけど。
それでも、自分で動けるようになったのです。  
トイレもひとりで行けます。
この時ユウタロウも「生きよう」と必死に頑張っていたのです。

そしてここからがユウタロウ再生プログラムの第二ラウンドです
トイレも自分で出来るようにはなりましたが、相変わらず下半身不随で、ユウタロウの後ろ足はまったく動きません。
そこで嫁さんがしたのが、下半身のリハビリ運動です。
ヒントはありました。 
もう一か所、別の病院の獣医さんにユウタロウの動かない後ろ足を診察してもらっていた時に話してくれたのは
「筋肉は使わないと、どんどん硬くなってくるの。適度に筋肉に刺激を与えないとね」
これがヒントでした!
これを参考にユウタロウの下半身再生プログラムの開始です。
でもこの時点では、嫁さんにすれば「これで本当に良くなるのだろうか…」とまるで雲をつかむ様な心境だったそうです。
獣医さんも見放したユウタロウだっただけに…。
それでも「とにかく やるしかない」と。
それでだめなら その時は諦めると…。

ユウタロウにとっても、嫁さんにとってもまさに過酷な試練が始まりました。
まずはユウタロウの後ろ足を、伸ばしたり縮めたり動かすことからです
それこそ ゆっくり ゆっくり 無理なく少しずつ刺激を与えるようにして…。
具体的には
ユウタロウを仰向けに膝の上に乗せ、後ろ足を両手で持って、伸ばしたり
縮めたり、往復運動を始めたのです。
それも毎日です。時間を決めて繰り返しました。
3ヶ月近く、休むことなくこれを毎日です。
一口に3ヶ月と言いますが、私から見てもこれはかなりの労力だと思いますよ。
それでも嫁さんは毎日これを続けました。
ただただユウタロウのためだけに
医学的に説明出来ませんが、この時の心境としては「とにかく骨がだめなら、足の筋肉をつけて、筋肉で下半身を固定してしまえ」と言ったところでしょうか。
なんとも乱暴なまるで、ど素人的発想でしたが、これが功をそうしたのです
効果が現れてきました!
リハビリを続けて3ヶ月…
まるで動かなかったユウタロウの後ろ足が、反応するようになってきたのです
最初は ピクッ ピクッ と言う程度でしたが… 次第に少しずつ…
確かにユウタロウの後ろ足が反応しています。
この時の心境は「まさに やったぁ…」いう感動でしょうか!
そしてしばらくすると、とうとう自分の意思で足を動かせるようになりました。
寝たままですが、バタバタバタと。
そして… 
そして、ついに自分の力で立つ時が来たのです。
始めはよちよち立ちです。
腰がふらついてすぐにこけます。
それでもまた立ち上がって、歩こうとします 。

頑張れ!! ユウタロウ

ユウタロウも必死です。
見ていてわかります。 
ユウタロウだって歩きたいのです
そして、それから5日後、とうとうその時がきました。

モンローウォークのように腰をふらふらさせてはいますが、なんとか普通に立って歩けるようになったのです。
1歩 2歩 3歩 と… 
本当に奇跡です  涙が出てきました。

歩けるよ ユウタロウ!!
頑張ったね ユウタロウ!

とにかく、嫁さんと手を取り合って、大喜びです。
本当に、涙が止まりませんでした。

ユウタロウよくやった! と。

そして… 
それからは、少しづつですが、立って歩いている時間も延びてきました
本当に、あのユウタロウが、自分の両足を使って歩いているのですよ。
ほんとうに半年前、下半身不随でまったく歩けなかった、あのユウタロウが!
夢のようです
そして、下半身リハビリのおかげで足の筋肉もだいぶついてきました。
あまり高いところは無理ですが、それでも普通の高さなら飛び上がることも出来ます。
獣医さんから「もって半年」と言われたのが、嘘のようです。
本当にKさんと嫁さんとの二人三脚のたまものです。
おばさんパワーが奇跡を生んだのです。
この二人がいなかったらユウタロウは半年も経たない内に、間違いなく死んでいたと思います。
ただただ 我々が諦め切れなかっただけで…。

今ではこんなところまで登れるようになりました。
そして
外リビングで寛ぐユウタロウ

昔のことは記憶にあるのかないのか?
ちょっとぎこちない歩き方ですが、今日もレイちゃん一筋のストーカーしています。
頑張れ!! ユウタロウ 別の意味で…アハハ

執筆:そのえ良(リョウ)/写真:堺ヨウコ

作:そのえ 良

よくご覧ください。猫の中にたくさんの猫。さて何匹の猫が隠れているでしょうか?

そのえ 良(本名 堺 ひろし

今年73歳になる道楽おやじ

昔(20代の頃)まんが家(イラストレーター)

今(70代)段ボール会社で設計の仕事

趣味は DIY

今までに『猫カフェ』を2件 設計施工

我が家の改築(DIY)はテラスの設置から 床張り サッシの交換など全部一人でやっている

『アウトドア・リビング』として設計した20帖もあるテラスには 我が家の 10匹の猫が いつもごろごろしている。 これ 見ているだけで至福の時間

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