猫と人。繋がるものがたり ネコット

創作 2023.08.24 僕、ルークっていうんだ

ネコ道って知ってる?
家と家の間にある側溝を板で覆ってあるだけの道なんだけど、
毎日僕が家と町まで往復するのに使っているんだ。

その道は僕しか通らない。
他の猫には通らせないのさ。

僕がいつも使ってるから、他の猫たちはビビッて、通らないだけなんだけど。
そこの道を抜けると、大きなデパートの裏道に出るんだ。

その日、ぼくはいつものようにネコ道から路地に出たときのことだった。
大通りの方からママが歩いてきたんだ。
3年ぶりだったけど、僕は忘れていなかったよ

アッ あれはママだ
絶対ママだ

ママも僕を見るなり、「ル~ク~」って叫びながら走ってきた。
でも僕はちょぴり恥ずかしくなって、反対側に向かって走ったんだ

ママは追いかけてくるってわかってた
昔もそうだったからさ

昔、ママたちと住んでいた家はこの町から100キロくらい離れた町なんだ。
お家には庭があってさ、僕はずっとお部屋猫で外には出してもらえなくて、いつも庭を行き来する外猫を眺めるだけだった。でも我慢できずに、時々外に飛び出すのさ。

僕は隙さえあれば脱走を試みて、庭に飛び出していたのさ
それをママとそこの家の子供達が
僕を捕まえるのに必死な顔して追いかけてきて、結局いつも連れ戻されてた。

あぁ
やっぱり今も追いかけてくる
ママは昔と同じで必死で僕を追いかけてくる

今の僕のお家には新しいオッコママとリョウパパがいるんだ。
きっとママはそこに来たんだ
ママとオッコママは親友らしい。

僕がここの土地にやってきて3年なんだよ。
僕はこうして、ぶらぶら外の道を歩いているけど、どらネコなんかじゃないんだ
アメリカンショートヘアという上等な猫らしい
上等というのは人間から見ての事だけだよ。ネコの世界じゃ全く関係ないけどさ

この3年で僕は凄く変わったのさ

ママと暮らしてた時は、お部屋から出してもらえなくて、いつも庭を通るどらネコをみるだけだった。
でもここに来てからは
来た日からお外OKだったんだ

いきなり「お外行ってもいいよ」と言われても・・・

最初は恐る恐る外に出てはすぐ引き返す
玄関が見えるところまでしか行けなかった
怖そうな猫を見かければ、すぐに帰ってきた

でも、僕はすぐになれたよ

もともと冒険家の気質と負けず嫌いな性格を持ち合わせていたんでね
僕がこの街に来ることになった理由はこういうこと。
少しだけ説明するね。

昔のママたち家族に一大事件があったからなんだ。
事件というのは、パパとママが離婚することになって、今までのお家から引っ越しすることになったんだって。
今度は小さなマンションだから、僕を飼えなくなっちゃう。

だからオッコママが引き取ってくれたってわけさ。
前のお家の子供達はみんな泣きながら
僕を見送ってくれたよ

僕は車でどこへ連れていかれるのか
すごく怖かったけど
オッコママもリョウパパも凄く優しく

「大丈夫だよ、今日からうちの子だから、楽しく暮らそうね」って言ってくれた

その通り、新しいお家ではお外もOKだったから最高だな・・・としばらくは思ってたんだけど・・・
しばらくして僕が町をぶらぶらし始めると、

「お前 ここらで見ない顔だけど、どこからきたんだ」

「ここはおいらたちの縄張りだから、入ってきたらぶんなぐるぞ」って
怖い猫ばかりなんだ

僕は
「遠い町から来たルークって言うんだ。よろしく」って愛想よく言っても
みんな無視するのさ
無視だけならまだいいのだけれど、道を歩いているだけなのに、睨みつけられたり、
「シャーッ」て怖い顔されたり
時々は本当に戦闘モードになるんだ
怖いけど、ここで怯んだらダメだと思って、
こっちだって「シャーっ」てやってやるんだ
そうすると、向こうはもっと怖い顔して「シャー」してくる

でもよく見ると、
1匹だけなんだ
あとの猫は弱そうに見えた
だから喧嘩したら勝てそうな気もする

ある日、
僕がお気に入りの猫道を歩いていたら突然あの怖そうなどら猫が飛び出してきて、

「この先はいかせねぇ」というんだ。

僕は知らん顔して歩いていたんだけど

「いくらいってもわからないならこうしてやる」ってとびかかってきて
いきなり僕のお腹を食いちぎったんだ。

僕は痛くて泣きながら家に帰ってしばらくはじっとしていた
みんなに気が付かれたくなくて
じっとしていた
我慢できないくらい痛くなってきた
ずいぶん時間が経てからだと思う

オッコママの叫び声が聞こえた
「たいへんだよ~ ルークが怪我してる」

それから僕は覚えてないんだけど
オッコママとそこの家の息子とリョウパパが、3人でお風呂場で傷口をあらってくれたみたいなんだ。
それから消毒して抗生剤をぬってくれた

数日して僕はやっとご飯を食べられるようになって回復したんだ。
それだけじゃないよ
あの怖いドラのやつにその後も顔を噛まれたんだ
そこから細菌が入って死にそうになったけど、

その時はリョウパパのお母さん(お婆ちゃん)が看護婦さんだったらしくて、化膿してるところに穴開けて膿を出してくれたらしい。
その時も一家総出で治してくれた
僕は2度も命拾いをしたんだ

車にも轢かれたことがあったけどそれは大したことなかった。

その後も喧嘩はしてたけど、だんだん繰り返しているうちに、この街の界隈では僕の事を知らない猫がいなくなって
「ルークってやつは凄いぞ」ていう評判とともに、
猫たちが逆らわなくなったのさ

僕はもともと人間には愛想がよいので、

どこへ行っても
「ルーク、今日もごきげんだね」とか
「今日もえらいね」とか言われるんだ
偉いと言われる理由は、オッコママやリョウパパがお買い物や食事でお店に入るとき
出てくるまでお店の外で待っていると、必ず「エライ」って言われるのさ

時々美味しそうな煮干しもくれる人がいる
ま、人気者っていうのかな

毎日毎日、いろんなことがあるけど、この街に来てそれなりに楽しく暮らしていたんだ。
ママは時々様子を見に来てくれて、昔みたいに追いかけてくる

僕は恥ずかしいから逃げる
そんな感じでママとは付き合ってるのさ。
それから8年位はこんな生活だった。
そのころには、町で僕に喧嘩を売ってくるやつもいなくなったし、
野良猫とも仲良くご機嫌に遊んでいたし、みんなが僕のこと好きみたいなんだ。

でも最近変なんだ・・・

ぼくもそろそろ歳なのかな・・・
ある時僕の身体が僕のでないみたいになったんだ
思うように食べられないし、歩くのも面倒臭くなってきた
僕はもうやり残したことがないからゆっくり眠りたくなったんだ
その日いつものようにオッコママに
「ご飯ちょうだい」って言ってみた。

お腹空いてなかったけど、そう言うと嬉しそうな顔して用意してくれるから。
「ご飯ちょうだい」って言ってみた。

それからリョウパパのところに行って顔を見ていたんだ。
リョウパパが「何か用かい?」って言うから

「何でもないよ」って言ってお別れした。


僕はお庭の隅っこの場所でゆっくり横になってみた。

気持ちいいなぁ
寝転がって眼を閉じた
あ~眠い
ゆっくり寝たい

ご飯も食べたしリョウパパにも「サヨナラ言えたし」
ありがとう・・・って
何時間たったかわからないけど
僕は気がつくと空からみんなを見ていた
リョウパパもオッコママも昔のママも、泣いている。

眠っている僕の周りにお花や食べ物をたくさん並べてくれている。
「みんな泣かないで
僕は本当にしあわせだったんだ
楽しかったなぁ
ありがとう」

ルーク18歳永眠 

執筆:土屋和子

「猫と人。繋がる物語」編集長。元月刊パリッシュ代表&編集長。62歳までは経営者。その後はフリーランスとして現在は事業プロデユース・執筆・プロモーション制作(パンフレット・HP)等を手掛ける。フリーランスの仲間たちを繋ぐサイト「ツキヒヨリ」https://tuki-hiyori.com/を運営。

都心で黒猫シャロンと暮らしている。

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