猫と人。繋がるものがたり ネコット

主婦 2023.09.07 猫と暮らしてみたら

マジでそろそろ猫を飼いたい。
そう思い始めて半年。会う人ごとに「猫飼いた〜い」と話してきた。
どうしたものか。猫飼いたい病です。

問題は、どうやって犬派の夫を攻略するかなのである。

猫を飼うには夫の許可をもらわない訳にはいかなくて。
なので時々さりげなく
「猫ってかわいいよねぇ」
「いつか我が家にも迎えたいなぁ」って言ってみたり、
ネコ歩きの番組なんか、偶然を装ってチャンネル合わせて 
「あ、なに?なに?おもしろそうなのやってるじゃん」
なんて家族で見たりして。

頭の片隅に猫はどうですか〜とリフレインさせるが如く、根回しはさりげなくね。
さりげなく。  

でも、ことある毎に
「やっぱり飼うなら大型犬だろ」
と返される。
「ゴールデンレトリバーいいよね。大型犬は子供たちの親友みたいな存在になれそうだし」
「家も建てたし、そろそろ犬飼うか」

いやいやいやいや、そっちくる?
そっちじゃないんだって。
頼むから、猫にしてーっ。

そんなある日の夕方、いつも行く花屋さんでのこと。
猫草を買いに来ていた男性と、店主の美希さんがなにやら猫談義をしている。
花を選びつつも二人の会話が気になってしょうがない。

「本当に猫が好きな人にしか譲りたくないんだよね。だから猫好きな人の紹介でならと思っているんです」
「うちは今3匹いるからなぁ、お父さんに聞いてみないとだけど。
でもこんなかわいい子ほんと欲しいわ〜」
「なに?なに?なんの話ですか?」
我慢できなくて割って入ってしまった。

その男性はいつも猫草を買いに来ているらしく、
「先週生まれたんですよ。写真見ます?」
実は5匹生まれたうちの3匹は貰い手がついて、あと2匹飼い主を探しているとい
う。

写真を見たらなんとロシアンブルーの赤ちゃんではないですか。

聞けば以前ブリーダーをしていたけれど、思うところがあって辞めたとか。
家猫が妊娠し、もう産ませないつもりだという。
本当に猫が好きで、大切にしてくれる人にならぜひもらってもらいたいという。

「私に譲ってはいただけませんか。もうずっと猫ちゃんを飼いたくて夢にまで見ていたんです。お願いします」
ちゃっかりと連絡先をいただいて帰ってきてしまった。

さて、なんて言おう

困ったなぁ、どう切り出せばいいのやら。
そわそわして、なんて言おうか頭を悩ませていたら
「おまえ、大丈夫?いつもの弾丸トークはどーした?」
「だよね〜、ハハハ」
「なんだよ、変だぞ」
ええーい、もう言ってしまえーっ!!
あのさ、って弾丸トークで一気に話してみると、夫の返事は意外だった。


「猫が好きでブリーダーにまでなったのに、猫の幸せを考えたらできなくなったって、正直な人だね。そんな人と偶然ばったり会ったってのは縁かもしれないなぁ。ゆーこ、猫が飼いたいんだろ?」

あれほど犬しか眼中になかった人が、呆気なく猫飼うかって言ってくれ、涙が出そうになってしまった。

ゲージを購入したり、猫砂やら餌やら準備万端整えて、一ヶ月後、夫婦で迎えに行ってきた。
ちっちゃいモコモコした子猫を最初に抱いた夫は、
「かわいい〜、なんだこのかわいさは」
夫の胸にペタ〜と寄りかかり、もう目尻が下がってデレデレ。
続いて私が抱っこすると、私の服をチュッチュと吸い出した。
はい、もう夫婦揃ってイチコロです。
午後、子供たちは速攻で帰宅。その日の我が家は夕飯どころじゃない騒ぎになり、新しい家族は大歓迎されました。
あの悩みに悩んだ半年はなんだったのか。
なんだ、呆気なく猫暮らし始まったぞ。
万歳!!

おへそ丸出し〝ルーク〟は三男坊

そんなこんなで、我が家にやってきた時は赤ちゃんだったルークも、うちの子になって1年4ヶ月が過ぎました。
夢の猫。ずっと憧れていた猫暮らし。
いやはや想像以上におもしろい。
先日夫が出張で留守の日、寝室で子供2人と私とで寝ていたら…
いつも夫が寝てるところにまさかのルークがヘソ丸出しで寝てました。

いつも紳士な小学3年生の長男アキラは、彼の性格上めちゃくちゃルークを大切に扱って、優しい言葉をかけるのが彼流。
毎朝登校の時は
「ルーちゃん。お兄ちゃんいってくるからね。すぐ帰ってくるよ。いい子にしててね!」と、ご挨拶もご丁寧。
「いってらっしゃい。ご安全に」
もちろんルークもキリリと返す。
家に帰っては真っ先にルークに「ただいまー!」と声をかけ、ルークに敬意を払って会話しています。

一方、二男坊のタスクは、真逆タスクは起きると、お気に入りの寝床で寝ているルークに大声で
「ル~ちゃん!そこにいたのーっ!!」
って突進してくるから、ルークはびっくりしていつも落下。
すかさずチビ助のタスクがルークの居場所を占領する。るーちゃんめちゃくちゃ不貞腐れて、猫パーンチ!
でもとうのタスクは
「なんだよぉ〜、ル~ちゃぁ~ん。猫パンチなんてしちゃだめだよ〜、かわいいなぁ〜もぉ〜」
相手にはしない。

ルークのお気に入りの寝床

行ってきますの時は、寝てるというのにわざと起こして、追い掛け回して鬼ごっこ。追いかけられたルークは曲がりきれなくていつも壁に激突。
「痛いってー!」って顔して頭を振って「痛いの痛いの飛んでけー」ってやってる。
そして無理やり子供部屋に閉じ込められると、普段はおとなしくて穏やかなルークも
「なんだこのやろう」ってタスクとだけは取っ組み合いの兄弟ゲンカが始まります。
でもルークののんびりずっこけ性格では、野生の力は5分も持たず、あっという間に音を上げて、私の足元に逃げ込んできます。
「ふぅ~ここなら安全。もうたまったもんじゃないよ、ママさん叱ってよー」

いつもと違う朝から賑やかな毎日でしたが、やっと子供たちの2学期が始まりました。
うるさいのがいなくなると、ルークはのんびり窓の外を眺めています。
時々窓に止まった虫をめがけては、飛び掛かってガラスに体当たりするドジ猫さん。
窓に付いてるルークのかわいい鼻の跡が愛おしい。

平和だにゃ〜

私がキッチンにいると

「いま邪魔かなぁ」
と遠くから様子を伺い、
「あ、気づかれた」
と思うと、だるまさんがころんだみたいに少しずつ距離を縮めてくる。
そしてこっそりそばに来ては見上げてるかわいい子です。でもね、パソコンでのお仕事の時はまいっちゃうよね。
そばにいたいからってキーボードに乗るから謎の字の連打「&“%#‘”!(#)$?V>BMFK」やれやれ。

でもそばにいて見つめててくれる、この猫ならではの優しさや愛情の深さは私にとって癒しであり癒しであり幸せです。

ボク、お仕事の邪魔はしませんから

そうそう、この間ペットカメラを設置してみました。
私たちが留守にしている時が心配で。
帰宅するとき、こっそり携帯でペットカメラを覗いてみたら・・。
車のドアが閉まり、私たちの足音がすると飛び起きて玄関まで猛ダッシュ、
「ずっとここでお待ちしていましたが何か?」
って顔で出迎えてくれる。かわいいヤツだなぁ。

おかえりなさいませ ボクずっとここで待ってました

猫は人間と会話するとき、瞬きと尻尾で会話するって知ってました?
ゆっくりと瞬きをして、ルークとおしゃべりする時間は幸せ度マックス。
必ずルークも瞬きを返してくれます。

ルークってもしほかのお家に行ってたら、こんなに天然のんびりなおっちょこちょいにはなってなかったかもしれない。
我が家のメンバーみんなマイペースだし、おっちょこちょいだから、絶対に似たんだと思う。
顔はめちゃくちゃイケメンなのに、この漫画みたいなキャラっていうギャップがいい。

あれほど大型犬を欲しがっていた夫ですが、帰宅すると真っ先に夫の膝に入り、猫なで声で大好きアピールするルークがかわいくて仕方ない。

負けじと「るーちゃーん、パパですよ〜。かわいいね〜」1オクターブ高い声出してもうメロメロです。
ルークのおかげで家庭は平和だし、猫と暮らせる生活ってこんなにいいことずくめだったのかってつくづく思う日々です。

息子たちがYouTubeを見ていると、画面の真ん前を陣取ります
寝相はね、いい方だと思うよ

取材執筆:MIE/写真提供:ゆーこさん

MIE

山梨県生まれ。1993年より東京都八王子市にて巷の花屋『多摩花賣所』を23年間経営。雑誌などにコラムを連載する。現在は花教室を主宰する傍ら、花と植物と猫のいる暮らしから、幸せと癒しを届けます。

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