猫と人。繋がるものがたり ネコット

看護師 2023.09.08 僕、お兄ちゃんになったよ

私(筆者)、夫、1歳の娘、5歳のオス猫1匹。これが現在の我が家の家族構成です。

飼い猫はペルシャのチンチラゴールデン、名前は琥珀(こはく)。性格は甘えん坊。

琥珀との出逢い

琥珀と初めて出逢ったのは2018年の秋。友人との大阪旅行中の出来事でした。猫を愛してやまない私、当時は単身生活を送っており、来るべき時が来たら猫と一緒に暮らしたいと思っていました。単身生活中か、結婚や出産を経てからか、老後か…。それがいつなのかはわかりませんでした。

普段からペットショップを見かけるとつい立ち寄ってしまう性分なのですが、この旅行中にも偶然ペットショップを見かけ、友人に付き合ってもらい入店しました。やはり猫は可愛い。どこの子も大変可愛らしい。ここは天国か…。その中でも店員に「ペルペル」と呼ばれていた子猫から目が離せませんでした。ペルシャだから、ペルペルだそうです。実にわかりやすい。

(この子だ…!)

直感でそう感じたのを覚えています。来るべきが来たのです。

悩み考え抜いた時間は30分ほどでしょうか。正確には覚えておりませんが、この子に家族になってもらおうと決意するのに覚悟が要りました。自分のことで精一杯な未熟者が、猫を育て上げられるのだろうかと。あれやこれやと説明する店員、必死に話を聞く私、その間に友人のスマホストラップで遊ぶペルペルないし琥珀。

名前の由来

そうそう。琥珀という名前は、ペットショップを出た後、友人と案を出し合って決めました。2泊3日の大阪旅行。琥珀との出逢いは初日であり、「この旅行中に名前を決めよう!」とプランの一つとして加わりました。

目の色や毛の色を名前の由来にしようか、洋風な名前と和風な名前のどちらが良いかなど、スマホを片手に調べ物をしながら考えたのをよく覚えています。結果、友人案の「琥珀」がなかなかに秀逸で、無事に名前が決まりました。チンチラゴールデンの美しい毛並みの色から命名。

海外のイケメン俳優のような端正なお顔立ちですので(親バカ)、「ペルペル」のほうが合っていたかもしれません。それでも、洋風な外見と和風な名前のアンバランスさにじわっときてしまったのです。

名残惜しい限りでしたが、しばしの別れとなり、2週間後に関東で再会しました。

1人と1匹の新生活

単身生活は何かと心細いもので、今まで観葉植物や熱帯魚と暮らしておりましたが、猫との暮らしは想像以上に心強いものでした。初めて自宅で自分以外の寝息が聞こえた時は、えらく感動したのを覚えています。ああ、一人じゃないんだと。今では珍しくない光景ですが、本当に猫もいびきを掻くんだなと妙に感心してしまいました。

ワンルームに1人と1匹。私は看護師として病院で勤務しており、忙殺される毎日でしたが、帰宅すると琥珀が話を聞いてくれました。正確には、聞いてくれていたのかはわかりませんが、壁打ち相手になってくれました。

仕事の不安で眠れない日々が続き、3時半に寝て6時に起きるような生活を送っていた頃は、いつもに増して琥珀の体温と呼吸音が心地良く感じたものです。 

手が掛かる長男猫

そんな琥珀との出逢いから数年が経ち、今では3人と1匹の生活となりました。同居人(猫)として夫との結婚を受け入れてくれ、当日は正装でお祝いしてくれました。

その後は娘も生まれ、更に賑やかな家庭となりました。

今年で5歳になる琥珀は、なかなかワイルドに育っております。同居猫がおらず、猫同士で力加減を覚える機会がないためでしょうか。ひとたび狩りモードになると、私たち夫婦の脚を容赦なく噛みついてくるのです。普段の甘えん坊な様子から、悪気がないことはわかっておりますが、どうしたものか。動く脚が獲物に見えてしまうようです。

時折粗相をすることもあり、手が掛かる息子を育てている心持ちです。

そんな琥珀と過ごしてきたからでしょうか。娘が生まれても、初めて子育てをする感じがしないのです。看護師であるため、日常生活上の世話には元々慣れておりますが、加えて琥珀の存在が大きかったように思えます。「そういえば、我が家にはすでに長男がいたな」という気持ちにさせてくれるのです。

兄になった琥珀

赤子と猫はうまいこと折り合いをつけながら共存できるのだろうか。

琥珀を家族に迎え入れると決めたあの日、この先自分のライフステージが変わっていく中でも、琥珀には必ず側にいてもらうと固く決意していました。他の選択肢は考えられません。とはいえ、いざその環境になってみると不安は募るものです。

ベビーベッド上で生活していた時期が過ぎ、娘もリビングでの生活が中心となりました。天真爛漫な娘が琥珀にちょっかいを出すたびに、「引っ張ったらにぃに痛いよ~」「近くで大きい声を出すとにぃいがびっくりするよ~」と教える毎日です。つい「にぃに(兄)」と呼んでしまいます。娘に付きっきりでいることは難しく、トイレに行くだけでも冷や冷やさせられます。

しっぽをふりふり。琥珀が狩りモードで何をしでかすかわからないな…と感じた時は、レーザーポインターや棒のおもちゃで遊んでいるのですが、それが難しい時は隣の部屋で1匹ゆっくりと過ごしてもらうこともあります。しかし、なんせ甘えん坊な性格なので、すぐに「にゃ~(ドア開けてよ~、そっちの部屋でお水飲むのが好きなんだよ~、窓辺で寝転がりたいんだよ~)」と嘆願し、同じ部屋で過ごしたがります。 

猫にとって赤ちゃんがいる空間はストレスになり得ると思いますが、同様に部屋に1匹で過ごすことでストレスが溜まり、悪循環になってもいけません。人間の安全も守りつつ、猫の居心地の良さも同時に考える必要があります。この均衡点を探る毎日です。

娘と琥珀の距離感を探りながら同室で過ごし始めましたが、琥珀が年長者として振舞っていることに気が付くまでに、そう時間はかかりませんでした。リビングで過ごし始めた娘を遠くから見守り、まだ力加減のわからない娘にちょっかいを出された時は自らその場を離れ、娘が泣いている時はキッチンにいる私の元へ知らせに来てくれる。立派なお兄ちゃんになりました。

猫は赤ちゃんが自分よりも弱い存在であることを理解し、大人よりも優しく接すると聞いたことがあります。確かに、「その優しさを持って私たち夫婦にも接してくれ!」と言いたくなるほど、娘には特別優しいです。たまに我慢ならないちょっかいを出された際には、嗜めるように軽く手を叩いたり甘噛みをすることもあり、不安は拭いきれません。それでも、相互作用で両者に良い変化が表れていることを痛感しております。

娘は最近、琥珀を指さしては「あーっ!」とはしゃいだり、自らおもちゃの棒を持って琥珀を遊びに誘います。撫で方も、はじめは上から叩くような力加減でしたが、今では優しく顎下を撫でられるようになり、琥珀の警戒心も弱まった様子です。影響しあって成長する両者、今後が楽しみでなりません。

子育てをしていると息つく暇がなかなかありませんが、子供が寝静まった夜21時以降、大人だけでゆったりと過ごす時間が毎日の楽しみになっています。夫婦で好きなテレビを見つつ、琥珀とも「今日もお兄ちゃんえらかったね。今から大人の時間を楽しもうぜ」と労い合います。

今まで1匹で過ごしてきた琥珀ですが、時期を見計らって2匹目の猫を迎え入れようか、お友達を作ってあげようかと考えております。猫は1匹で十分だ、早く気の合う遊び相手を連れてきてくれ…。琥珀が何を考えているかはわかりません。それでも、我が家の長男として少しでも楽しい人生…ニャン生を送れるよう、今後も対話を続けてまいります。

お疲れ様、いつもありがとうね琥珀。

今日はどんな一日だった?

執筆:葉山つむぎ

葉山つむぎ プロフィール

看護師・保健師として、精神神経科救急病棟と精神科訪問看護を経験。子供が幼いうちは在宅ワークに切り替えたいと考え、一旦看護師を退職する。

現在はフリーランスとして、家事育児の合間にweb・コピーライティング、作詞、音源制作、看護学生の学習サポート等、自分にできることであればどのようなご依頼でも承っております。

子供と猫と戯れながら在宅ワークで生計を立てようと、もがいている最中です。

記事の一覧へ