猫と人。繋がるものがたり ネコット

経営者 2023.10.06 魔女猫・マリン

ネコ伝説というのは色々たくさんあるけど、私も猫というのはただものじゃないと思っている一人です。

これまでの自分の人生に猫がいなかった期間というのはほんの数年。それが今です。
猫のいない生活になって、初めて猫の事をしみじみ考えています。
特に私が20代から一緒に暮らしたマリンという猫は、単なる猫とは思えません。
だって、ネコとは思えない表情や行動を度々していましたから。
そしてマリンは、ネコ以外の顔を私に見られたその瞬間、気まずそうな顔をしていました。
「おっと、・・・思わず違うアタシを出してしまったわ」みたいな顔でした。

ところで、ネコっていつから人間と暮らすようになったのかしら・・・?
ネコの先祖は中東の砂漠地帯に生息していたリビアヤマネコと言われているようですね。
キジトラに似ていて、警戒心がなく、群れを成して行動するより1匹で行動する習性、その気まぐれさは今も残っていますね。人間ともそのころから家族のようなコミュニケーションが取れる能力を持ち合わせていたようです。

そんな昔から生存していながら、まだまだ猫がどのように進化してきて、どのような能力を持つのかが解明されてないというのが不思議な事です。

ネコは神のお告げをもってこの世にやってくるとか、前世の誰かの生まれ変わりだとか・・あるいは魔女の化身だとかとも言われます。時には悪評もあるのですが、考えてみれば猫によって私たちの生活が脅かされたことなどはなく、いつも愛らしい仕草さに癒されるばかりの存在です。

魔女と黒猫の物語「魔女と宅急便」のように人助けをする可愛らしい魔女だっているわけです。私たちは新たな魔女のイメージを塗り替えられました。そして猫は十分な強かさも持ち合わせていることも。

さて、私と19年も一緒に暮らした魔女猫・マリンは愛くるしいアメショー(アメリカンショートヘア)でした。

人が好き
世話焼き大好き(大阪のおばちゃん気質)
なにか面白そうなことがあれば、考えなしに飛び込んでしまう
好奇心旺盛なお転婆猫なので、何度も死にそうになりました。
失敗に懲りない女の子でしたが、19年という天命を生ききったのです。
まさに魔女猫とよぶにふさわしい猫でした。

マリンとの出会いは、今思えばとても不思議です。
真っ暗な夜の道、公園を通り過ぎようとしたときに「みゃん」と本当にか細い声が聞こえたのです。
ふとブランコの脇の草むらを見たら、猫の目だけ見えました。

あら野良猫ちゃん?
うん?でもまだ小さいわねえ
ひょっとしたら生まれたばかりかも・・・
どうしてこんな所にひとりでいるの?
それに、野良猫には珍しいアメショーじゃないかしら・・・
まさかのアメショー?

私の事をその猫も見ている。
このまま置いてはいけない
だってこの猫、きっと私だから声をかけてくれたような気がしたから。
私を待っててくれた・・・そんな気がしたのです。

頭の中で色んな言い訳を考えながら、家に連れて来てしまいました。
一人暮らしだから、別にだれに遠慮するわけじゃないけれど・・・
実は当時の私、ペット禁止の貸家住まい。
これからどうしよう・・大家さんに見つかったら大変だわ。
でも当時の家は木造の貸家で、畳部屋が二つ並んでいて、縁側のある家。

縁側に猫。ピッタリではないか!

数日後のことだった。
大家さんが珍しく家にやってきたのです。それも突然に。
「猫の声がするんだけど」って。
私は「アッ隠さなきゃ」と思う間もなく、ネコが飛び出して大家さんに向かって
「ニャンにゃ~ん」と鳴きながら、足下に絡まりついてしまったのです。
縁側にすわった大家さんは、びっくりしたようだったけど、あまりにその仕草が可愛かったのか「どうしたの?」って理由を聞いてくれました。

私が公園での出来事を話すと、
「そう、そうなの、じゃ仕方ないわよね。 それにこの猫、アメリカンショートヘアみたいだね」って、思いがけないことを言いながら子猫を膝の上に載せてくれたのです。

これで安心して暮らせる!やったぁ!と思いました。
正式に住めるようになって、名前はマリンと名付けました。特別な思いはなく、ひらめきで付けた名前です。
子猫時代はおとなしくて、本当に可愛らしい猫だったのですが、成長するにつれ、だんだん本性が現れて、物凄い好奇心旺盛な仔であることがわかりました。



ある日のこと、外出先から帰ると、マリンがいないのです。
外には出していないし、鍵もかけて出かけましたから。
「マリ~ン」と大声で叫ぶとしばらくしてから
「ニャおん にゃ~お~ん」と声がしたのです。
それも空の方で・・・

えッ 屋根?
屋根にいるの?

慌てて屋根を見ると、軒先のすぐそばで下りれなくなって泣いていたのです。
鍵は全部閉めたはず。どうやら開いていた高窓を見つけたマリンはそこから屋根に飛び乗ったらしいのです。

やれやれ まさかの猫の行動には驚かされます。

その後、私は5回も転居するのですが、マリンはどこへ行ってもすぐにそこの家に慣れる子でした。
友達が遊びに来てもすぐにゴロニャンと甘えるので、人気者になるし。
どうやら大家さんの時に学んだのか、人にはお愛想するものだと思ってるような気がします。

宅急便屋さんが来るのを、チャイムが鳴る前に察知して玄関で待ち構えていてドアが開くと「ニャーんニャー (ご苦労様です)」というのです。
人が好きで来客をいつも玄関で待っているような子でした。

数年後、私は結婚し子供も生まれ、賑やかな暮らしになっていきましたが、マリンも成長していくと共に、またまた新たなキャラが出てきました。
それは好奇心旺盛、人が大スキに加え、世話焼きだということが判明しました。

娘が生まれると、がぜん張り切って子育てをしてくれました。
寝ている娘のそばから離れません。まるで、「ワタシがこの子を守る」かのようです。

ある時、ソファに寝ていた娘が寝返りしそうになった時には驚きの行動をしたのです。
落ちないように自分の身体を壁にして、守ったのでした。

いつも一緒。寝るときも一緒だったマリン

こんなことも度々ありました。私が台所に立つていると、リビングで寝ている娘が泣きます。
すると、その声を聞くや否や、マリンは、すぐ私に知らせに来るのです。
「にゃーにゃ―(泣いているよ) 」って。
まるで乳母のように私と子育てをしているように見えました。

そんな世話焼きのマリンですが、ドジな一面もあるのです。
ある日、私が買い物から帰って来た時でした。
家の中から聞いたことがないようなうめき声というか叫び声というか・・・
一瞬強盗か?と思うほどの声です。
ネコの声とは程遠い鳴き声が聞こえてきたのです。

私は急いで部屋に入って鳴き声の方に走ると、
マリンがお風呂の湯舟の上に掛けていた洗濯ハンガーにしがみついて、動けなくなっていたのでした。動けないというよりか、宙ぶらりんの状態ではありませんか。
ずぶ濡れの様子を見ると、浴槽に1回落ちて、必死で這い上がったものの動けなくなったということなのかしら・・・
でもどうしてどのようにして浴槽の洗濯ハンガーにつるされることになったのか、
いまだにわからないのです。
とても怖かったみたいで、必死の鳴き声で助けを呼んでいたのでした。

とにかく無事でよかった。

マリンはいつも私たちの様子をうかがっているようで、じっと横から見つめていました。なんだかいつの間にか、私はマリンに見守られているような気がしてきていました。
娘が10歳、マリンが19歳の時までずっと一緒に暮らしました。
そんなマリンも歳には勝てなかったのでしょうね。
以前から腎臓の具合がよくなかったマリンは、ほとんど食べ物を食べなくなってしまいました。
それでも最後まで一人で歩いて、おしっこもちゃんと自分でしてくれていました。
最後の日、よたよたと歩いてみんなが集まる居間まで歩いてきました。
ネコの最後は人のいないところを選ぶと聞いていましたが、マリンは違いました。

みんなのいる居間にやってきて、そこで息耐えました。
みんなが見守る中で、天寿を全うしたのです。19歳になろうとした春の事でした。

私は思います。マリンは私にとってはかけがえのない魔女でした。私を幸せにするためにこの世にやってきたに違いない。
こんなに長い間、私に寄り添ってくれて、ネコとは思えない世話焼きや不思議な行動を見せてくれたマリンの一生でした。
可愛い魔女猫、マリン、ありがとう

あなたは十分私を幸せにしてくれました。
本当にありがとうね。

取材協力:田原絵里奈/執筆:土屋和子

㈱SAG PLUS代表取締役
田原絵里奈

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実際マリンちゃんは19歳直前で亡くなった猫でしたが、記事にもあるように、人懐っこく世話焼きな猫でした。
ネコって、本当に不思議な存在ですね。

土屋和子

「猫と人。繋がる物語」編集長。元月刊パリッシュ代表&編集長。62歳までは経営者。その後はフリーランスとして現在は事業プロデユース・執筆・プロモーション制作(パンフレット・HP)等を手掛ける。フリーランスの仲間たちを繋ぐサイト「ツキヒヨリ」https://tuki-hiyori.com/を運営。

都心で黒猫シャロンと暮らしている。

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