猫と人。繋がるものがたり ネコット

僧侶 2023.10.16 女性僧侶・海さんと3匹の猫

長崎県長崎市にある鶴城山・教宗寺に女性のご僧侶さまと3匹の猫様がおられるらしい。

浄土真宗本願寺派のお寺(創建は1607年)でご住職は小岱利証(しょうだい りしょう)様。この教宗寺は1607年のご開基以来17代目の住職だといいます。

鎌倉時代に親鸞が開いた浄土真宗の1派で京都の西本願寺を本山とする「浄土真宗本願寺
「南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ)」を唱える浄土真宗本願寺派は「阿弥陀仏に帰依すれば極楽に往生できる」という教えを持っています。念仏を唱えるのは、阿弥陀仏への感謝の心を示すためだそうです。

今回は、そこのご長女である海さんと3匹のお猫さま、りん(鈴)ちゃん・さくらちゃん・こうし(光至)君とご門徒さんや地域の皆様との交流のお話しです。

女性の僧侶というと、尊く近寄りがたいイメージですが、海さんは皆さんから「うみちゃん」と気さくに呼ばれているという事です。
お寺には保育園が隣接されていて、いつも賑やかな子供達の声がしています。理事長はお父様、お母様が園長先生をされています。海さんも学校卒業後、保育士として手伝っていた時期があったそうです。

海さん、
小さいころから女性僧侶になりたかったって本当ですか?

海さんの一日は早朝のお参り(お経をあげるお勤め)から始まる。
毎日、お客対応や電話での問い合わせ・相談、法要の準備、イベントの企画運営、過去帳を書いたりと、多岐にわたります。気が付くと、一日があっという間に過ぎているとか。ご主人は京都にお住まいなので、遠距離結婚とのことです。

女性の僧侶は珍しいので思い切って聞いてみました。
「お寺の後継者として、僧侶の道を選ばれたのですか?」と。
すると以外なお返事でした。

「私、小学生の頃からお寺に携わりたいと思っていたみたいです。作文にも書いていたくらいだから、お寺が大好きだったのですね。
小さいころから、当たり前にお寺に多くの人達が出入りしているのを見て、事あるごとに賑う雰囲気がすごく嬉しかったんだと思います。
お寺独特の習慣にも全く抵抗なく、いつも自然体でご門徒さん達と関わることができました。
私がこのお寺を離れたのは、短大時代と、僧侶の勉強をするために数年京都に住んでいた時だけでしたね。」

海さん、
今はどんな活動してますか?

私自身、多くの人達のコミュニティの場になっているお寺で育ったものですから、いつも人のために役に立ちたいと思っていました。
現在は、先ほどお話したお寺の仕事以外に、中学校の不登校の子供達への支援に、週1~2回行っています。
そのほか、『NPO法人DV防止ながさき』で理事として講演活動等もやっています。
この活動に入ったきっかけは、大学の時の友人が彼氏との関係で悩んでいた時、自分には知識が全くなかったために、適格なアドバイスができなかったことでした。後になって、それはDVだったと知ったのです。
被害者の多くは優しい女性で、パートナーを大切に思っている人が多いのです。
ごく普通の人が被害者になる可能性がある。だから、DVとは何か?どうしたら予防できるのか?などの知識を持つ予防教育は必要だと考えます。
中学生にも大人が上から教えるのではなくて、対等な立場で、共に考えられるような内容になるように心掛けています。相談者には、過度に驚いたり、非難したりすることなく、寄り添って、相談者の気持ちを大切にすること、これからどうしたいかも相談者の意見を大切にしています。こういう経験はお寺での私の役割として、大いに役に立つことだと思っています。

海さん、
お寺にいる3匹の猫ちゃん達のこと教えてください

お寺には人だけでなく猫もいつもいました。一番長く一緒にいたのは、〝レン(蓮)”ちゃんという猫。
17年も一緒に暮らしました。
レンちゃんが病気になった時は、家族全員で心配し看病したのですが・・・
最後は玄関の下で眠るように死んでいたのを私が見つけました。
レンちゃんが亡くなった後、家族全員がペットロスになってしまいました。
そんなある日、島原で地域ネコ2匹を母が引き取ってきました。
それが今ここにいる〝りん(鈴)〟です。残念なことに、もう1匹は来て間もなく病気で死んでしまいました。

お猫の〝りん〟ちゃん、
お猫様たちのこと教えてください。

は~い、りんです。
アタシが一番古くからここにいるわ。

この場所がお気に入りなんだけど、寝てばかりいるわけじゃないのよ。
お坊様のお勤めの時には、ちゃんとお参りもするわ。
お寺の一日のルーティンはよく心得ていているから、邪魔にならないようにね。
でもお坊さんやご門徒さんにお愛想するのも大事な仕事なの。
お坊様とも仲良しです。
ほらねっ 頭撫でてもらった!

妹分の〝さくら〟
朝早くから本堂の真ん中を陣取って、みんなが来るのを毎朝こうして待っているわ。

ご門徒さんが見える日は案内係?もしてくれます。

「こちらです ニャン」
さくらは私よりお愛想いいみたい

ほらね、さくらは院内どこかで、ご案内係をやっています。
さくらがここに来たのは、冬の寒い日だったの。寺の境内でウロウロしていた時、保育園の桜組の子供たちが見つけて〝さくら〟って名付けてくれたんだって。そのおかげで、お寺の仔になれたんだよ。
ところがこの仔、知人のところで飼っていた仔で、ある日突然いなくなった猫だったことが分かったの。インスタで呼びかけていたのを見つけたらしいよ。
すぐに連絡したけど、さくらったら、こっちの生活がお気に入りみたいで、そのままお寺の子になったってわけ。でも距離的にはかなり離れているのに・・・どうやって来たのかって、人間たちが話していたわ。不思議ねぇって。

こうし(光至)は男の子。元気な良い子です。
時々、こんな怖い顔するけど、本当は優しんだよ。

こうしがここに来たのは、まだ小ちゃな赤ちゃん猫だったわ。
本堂の前を通るたびに「ニャン」ってアタシのこと見るの。
可愛かったわ。お寺の子になればいいのになって思っていたら、ご住職様が「いいよ」って。
通る人みんなに「ニャン ニャン」って挨拶してたからね。
めでたく家族の一員になれました。それなのに、今ではすっかり我がもの顔になって、ご覧の通り。
チョット威張ってるの。

海さん、
お寺の人達とお寺コミュニティのこと教えてください

お寺は家族だけで生活しているわけでなく、雇いのお坊様もいるし、ご門徒さんや地域のお客さんも常に出入りしているところです。特に教宗寺は地域とのつながりが深く、様々なコミュニティイベントをやっているのでご紹介しますね。

住職自ら僧侶に向けた勉強会
浄土真宗の教えの要をみんなで学ぶ日です。
毎月6日20時~は僧侶に向けた勉強会を開催しています。

歎異抄を読む会 正信偈を読む会
奇数月22日20時〜 歎異抄を読む会
偶数月22日20時~ 正信偈を読む会
初めての方もご門徒さん以外もどうぞご参加ください。

あれっ?よく見ると猫ちゃんも参加しています。
テキストはお寺で準備しているし、参加費は無料です。

藤の会 若女性のお楽しみ会

女性たちの会です。先日は「たのしい農家お百笑さんの百笑茶屋」でランチ会をしました。
身体がよろこぶランチでした。
みんなで計画してお出かけするのも、毎回の楽しみだって。
会員は随時募集中です。

お寺でヨガ
第3火曜日 19:30~20:45はお寺でヨガをしています。

読経+ヨガで心も身体も整う大切な時間です。
お寺が初めてという方もお気軽にどうぞ
第3火曜日 19:30~20:45
1,500円/1lesson(チケット制なら1,100円) ご門徒さんは体験無料

親鸞様の月命日
保育園の本堂参拝は毎月親鸞様の月命日16日前後に行います。
本堂でお参りして仏様のお話を聞きます。

今月はいのちのお話。
「みんながいま人間に生まれて来たのはとてもすごいことなんだよー!」と園長先生。
大きな声でのおつとめや季節の歌もみんなで歌いました♪
子どもたちの元気な声が本堂に響くのがとても嬉しいです。
9月29日は中秋の名月
お寺は季節を大事にします。
毎年この時期にはお月見会が行われます。

栗ごはんお弁当とお月見そうめん。ゆで卵のお月様を浮かべました。
お月見団子もね。みんなでのんびりお月様待ち
おしゃべりもとても楽しくて。
お月様も綺麗に見えて、「でたでた月が〜♫」
と自然に歌が出ちゃうほど 笑

初参式も大事な儀式
生れた赤ちゃんと神社にお参りすることを「お宮参り」といいますが、浄土真宗では初めてお寺にお参りする儀式を「初参式」といいます。

仏の子として育ち、これからの人生を仏さまのお慈悲に包まれて生きていけるよう、家族でお参りします。
ご希望の方はいつでもお問い合わせください

海さんから一言

教宗寺では多くの方にお寺へのご縁を作っていただきたいと、マルシェや寺ヨガをはじめ謎解き脱出ゲームやテントサウナ、音楽イベント、ワークショップなど様々なイベントを企画・運営していています。
私は、お寺が地域の拠り所となれたらいいなと思っています。
仏教も社会活動もその根底にあるのはいのちの話であると共に、どのように生きていくかという生き方の話であるという思いから活動を行っています。

あれ?
ご案内に疲れたのか・・さくらちゃんは寝てしまいました。笑

インタビューイー:小岱 海/執筆:土屋和子

小岱海さん

浄土真宗本願寺派教宗寺衆徒。

現在はDV防止ながさきの理事としてデートDV予防教育に従事し、長崎県内の多く中高生に向けて講話を行う傍らSNSでの相談事業に携わる。

2020年より長崎市のプロジェクト「ながさき若者会議」メンバーとして活動。お寺を活用した居場所づくり「GOKOU」のチームリーダーとして、主に学生への居場所づくりに積極的に取り組む。

2021年7月長崎性教育コミュニティアスターを設立し長崎の包括的性教育の普及を目指す。また、生理の貧困対策プロジェクトながさきのメンバーとしても活動中。

同年、学校内別室における不登校児童生徒支援者として、週に1度市内中学校で活動を行う。

土屋和子

「猫と人。繋がる物語」編集長。元月刊パリッシュ代表&編集長。62歳までは経営者。その後はフリーランスとして現在は事業プロデユース・執筆・プロモーション制作(パンフレット・HP)等を手掛ける。フリーランスの仲間たちを繋ぐサイト「ツキヒヨリ」https://tuki-hiyori.com/を運営。

都心で黒猫シャロンと暮らしている。

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